春秋おじさんのブログ

中学受験の国語をオンラインで教える家庭教師です

<2022年受験体験記>Rくん

Rくんとは、6年の2月から一緒にお勉強しました。
塾なしでの2科目受験で、算数はお母さまがご覧になっていて、国語を私が担当するという形でのお勉強でした。

Rくんはなんといっても、語いのセンスがピカイチ*1でした。また、本人は「自分は勉強がキライだし、できない」と思い込んでいますが、実は(私がこれまでに見てきた他の生徒と比べても)地道な努力が得意、という面白いお子さんでした。

Rくんとのやりとりの振り返り

6年2月

最初の漢字テストです。前もって「ていねいに書いてね」と私から言われてしまった(が、その意味を深くは理解していなかった)Rくんは、かわいそうなことに、かなり厳しく指導されることになってしまいました。

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6年1月

受験直前期の漢字練習帳です。字の細かい部分までバッチリ書けています。

なんとRくんはこの1ページびっしり書く練習を入試まで、ほぼ一年間、毎日続けました。その努力のおかげもあって、漢字の問題はどの中学でも、安定した得点源になりました。

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6年10月

Rくんは暗記が得意なため、解説動画を前もって見てもらうと、自分の頭で理解できているわけではないが、授業では動画と同じ内容をそのまま口で再生できてしまう、という少々困ったことが起こってしまいました。

そのため、年度の途中からは解説動画をあえて送らず、ビデオ通話の授業の中で理解できるまで徹底して解説を行い、さらにそれを復習教材で確認する、というサイクルに切り替えました。

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6年12月

Rくんに頭を使っていただくための取り組みは、少しずつではありますが、実を結んでいったように思います。

直前期の過去問演習では、ほとんどの問題を自分で分析できるようになりました。下の画像2枚の青字*2は、私が分析が不十分だと感じたところや問題が難しいところにコメントを書いていますが、自力で直した問題の方が多いことが分かります。

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お母さまの振り返り*3

先生との出会い

元々息子は3月生まれで発達が遅く、普段の会話すら意味が分からない時が多いほど会話力が無く、自分の好きなことを一方的に話すという困った状態でした。
こんな状態だったからか、4年生の途中に通った個別塾ではうまくいかず、5年生の時も大手塾に行きましたが集団授業には入塾テストすらさせてもらえず、少人数の個別へ入れられました。しかし、授業時間の半分くらい先生が他の人からの電話で退席するなど、先生には恵まれない日々を送っていました。
このままではいけない、ちゃんと国語を教えてもらえる先生はどこにいるのか?とネットで探しましたが、なかなか国語の塾は少なく、偏差値が低めだったせいもあってか*4、まともに相手にしてくださる先生には出会えませんでした。
偏差値が低く、幼くて会話もままならないとはいえ、国語力を上げたいという一心でネット検索しまくりの日々でした。

諦めかけたそんな中、私が愛読していた中学受験のブロガーの方が、先生が生徒を募集していると書かれている記事を見ました。
ブログを読んでいると素晴らしい先生のようで、読むたびにうらやましいと思っていましたが、なかなか出会えないからあとは近場で探すしかないと考えていた時期だったので、このチャンスは逃してはいけないと思い、紹介をお願いしました。
実際zoomで初めてお話しさせていただいたときは、これまでの勉強より難しい教材と内容でついていけるのか、このまま指導できないと断られないかと心配していました。
しかし先生が「大丈夫です」とおっしゃってくださったので、できる範囲でやっていこうということで息子の勉強をサポートする日々が始まりました。

 

勉強の内容

最初はとにかく音読が飛ばし読みや行飛ばし、詰まったりでめちゃくちゃの状態でした。
そこで先生が見本の音読をし、速度を3つのレベルで作った動画をYouTubeに上げてくださり*5、それを見ながら真似して音読する日々が続きました。

宿題や音読を少しサボった日はすぐに見抜き指摘してくださり、気が付かないことが多い私は驚いたことが多かったです。
私は家事の片手間でのサポートなので、ちゃんと宿題をしていないことに私が気付いていなかったときでも、授業の時にはちゃんと指導してくださったのです。

これまでダメなものはダメとしっかり指導していただいた経験がなかった息子にとっては、手を抜くとバレるという事も分かり、宿題はやるのが当たり前という習慣を得ることができました。

かなりの期間続けていくと、音読もまともになってきました。
これが後々、実は学校で起きたトラブルの時に役に立ったのです!大人もいる前でトラブルの相手に対して自分の意見を言う機会があったのですが、自分の意見を気持ちを込め、ちょうど良い間を置きながら話すことができました。
国語力って、国語の教科だけでなく万能なんだな、と思い知った瞬間でした。

 

その他の宿題として取り組んだのは、
・漢字をノートに1ページ毎日書き、それを先生へ送ること
・記憶アプリで慣用句や文法などの知識分野を覚えること
・読解文の問題を2題程度解いて答案をアプリで送ること
でした。

漢字は嫌いではないのですが壊滅的な字の汚さで雑、読めない、トメ・ハネ・ハライやバランスが最初はひどかったです。
毎度同じ間違いをしていたり、意味不明な解答を送ることもありましたが毎回丁寧に間違いを指摘してくださり、頭の下がる思いでした。
親の私が大雑把なために全てマルと思ってしまって気がつかなかった間違いや、そもそも知らなかったポイントを指導してくださり、漢字も指導はプロでないと難しいということを知りました。

記憶アプリも毎回息子に合わせて試行錯誤してくださり、内容をどんどん変化させてくださいました。
文法については、親の私は、プリントをノートに貼り付けたりした昔ながらの間違いノート作ろうかなと思った事もあったのですが、一問ずつ切り貼りするのも大変だし、扱う量も膨大になるので、先生が「作らなくても良いですよ」とおっしゃってくださり、私は全て手間を省かせていただきました。
毎日何度もアプリでたくさんの問題量を解いたおかげで、文法問題も得点源にする事ができました。

読解文については、
・問題を解いて答案画像を提出して採点を受ける
・先生の解説動画を見て、自分で解いた答えとの違いを確認する
・解き直しをノートに書いて再提出する
ということを繰り返しました。
解説動画で考え方の基本を学んだ上で、次の授業までに何度か自分で答えに辿り着くまでの試行錯誤ができました。
これほど理にかなった勉強法はないと思います。
対面授業の一度だけだと解説を聞いてもなかなか頭には入らないですが、この方法であれば、自分の考え方や答えと何度も向き合うわけですから。現代のツールを使った最適の方法だと思います。

授業時間も同席はしていませんでしたが時々話し声が少し聞こえることがあり、間違えた所は徹底的に時間をかけてくださっていました。
「どうしてこの答えになるのか、どう考えていけば良いか」常に問いかけながら考えさせて息子の思考力を伸ばしていただきました。どの教科でもそうですが、常に「なぜ?」という思考が大事だと思い、私も算数をサポートする際に取り入れさせていただきました。

受験前の数ヶ月は、5校くらいの過去問を解くことになったのですが、答案を送ったら数日中のうちに採点をしてくださり、ラストスパートで解きまくることができ、解き直しも早い段階でできました。受験直前の1ヶ月くらいは過去問をほぼ毎日送っていたのに、都度丁寧な採点やコメントをいただけて、本当にありがたかったです。

 

親へのサポート

毎回授業の終わりの際、親の私とお話をする時間を作っていただきました。
勉強の進捗や課題点への対策や、普段の生活で変わったことや体調面、学校生活についてなど、あらゆる事について、相談にのってくださいました。
親の私のメンタルも毎回救われました。
アドバイスを毎週いただけるので、勉強内容も今後の課題も安心しました。やはり親子では気付かないことなど、全く違った視点でお話してくださり、普段の生活で意識すれば良いことも教えていただきました。

塾に通っていた時代にいつも気になっていたのは、授業でちゃんと理解できていたのか、どこまで進んだのか、今後の課題は何なのかということでした。課題を数ヶ月後に聞かされて、今頃?と思うこともあったのですが、毎週お話ししてくださるとこんなに安心できるものなのだな、と思いました。
長めの時間、お話につきあっていただいたこともあり、ありがたい経験でした。

 

受験を終えて

4・5年生のときは通信教育をとってはいたものの、国語の授業はほぼ聞いておらず、個別に行った時も勉強はほとんどしていませんでした。その時の偏差値は四谷大塚で30台。毎回恐ろしい点数を取ってもへっちゃらな息子の隣で私だけ青ざめていました。

6年生からは首都圏模試のみを受けていたので単純比較はできませんが、国語の偏差値は1年間の平均は46、最後の模試は51が取れました。2科目受験に絞っており、算数の方が元々得意だったので、大変満足な結果です。国語が足を引っ張らないで安定した結果を出せるようになりました。
問題用紙への書き込みも以前はほとんど線やマークづけもなしでしたが、今は読みながらしっかり分析を書き込んで判断し、答えの根拠を確認できるようになりました。

受験は、私が心配症なこともあり、4校を受験したのですが、全て合格でした。
そのうち2校ついては特待合格までいただけました。これは確実にご指導いただいたおかげです!
特待受験の際は国語の手応えがあったらしく、その通りの結果となり、鳥肌が立つほどでした。

小学校入学時にはひらがなすらまともに書けず、プリントに穴が開くほど書き直しをさせられて泣きながら宿題を出していた息子が、親の私でもできない問題を解いて点数が取れるようになりました、感涙です。

私自身も学生時代に先生のような方に出会えていたら人生が違ったのかもしれないと思っております。

勉強をする時は素晴らしい先生に出会うこと、これに尽きると思います。
今回は出会えて非常に幸運でした。
先生には心より感謝しております。ありがとうございました!!

f:id:shj043:20220212002253j:plainRくんからのメッセージ

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Rくん、合格おめでとうございます。
特待まで取れたんだから、もう「自分は勉強が苦手だ」なんて言わないでね笑。これから先も、勉強するのがイヤだな、って感じることがあるかもしれないけれど、「自分はできる!」っていう自信を持って、少しずつで構わないので、自分から取り組んでいってください。

ところで、自分が書いた文にちょっと変わったところがあるのは気づいているかな?*6
まず、「先生は…よく成績をのばせるようになり…」。
これは先生、ありがたいお言葉をいただいてしまいましたね。Rくんに出会うまでは、厳しい割には生徒の成績をロクにのばせないダメ先生でしたもんね。そうです、先生はRくんに育てていただきました…笑
たぶん「ぼくはよく成績をのばせるようになり」って書きたかったんだよね?主語を忘れないで😂
それから、「いままでありがとうご『ざ』いました」ですよね、きっと。

少し変わった文(?)だけれど、Rくんの気持ちは伝わっています。ありがとう。
中学に入って、友達や先生にうまく自分の考えや気持ちが思うように伝わらないときがあるかもしれないけれど、落ち着いて整理して話せば、必ず伝わるからね。絶対大丈夫だから、伝えることに前向きにチャレンジしてみてくださいね。

*1:YouTubeで見た流行りの言葉は(おそらく)一発で覚えているようでした(たとえば「はい、論破」など)。先生や大人が「やめなさい」と言いたくなる言葉を嗅ぎ分ける嗅覚がめちゃくちゃ鋭いです。こういった語いのセンスは漢字や語いの習得に活かされました。

*2:ちなみに、赤字の大人の字はお母さまの字です。私がアプリに入力した文字を、お母さまは逐一Rくんの答案用紙に写してくださっていました。本当にありがとうございました。

*3:なるべくお母さまに書いていただいたまま掲載し、脚注のみ春秋おじさんが書いております。

*4:志望校や模試の偏差値を募集要件に入れる先生もいらっしゃるそうですが、私はそういった制限を一切設けておりません。最上位で難関校を目指すお子さんであっても、たとえば発達障害やいじめ、不登校など、さまざま困難な状況にある中で勉強しているお子さんであっても(念のために書きますが、本記事のRくんのことを指して書いているのではありません)、一人ひとりと向き合うことは全く変わらないと考えているからです。

*5:かなり遅く一語一語はっきり読む、②ゆっくり一文(まとまり)ごとに読む、③ふつうのスピードで読む、という3タイプの動画を作成しました。最初の約1ヶ月間は①を中心に練習、次の約1ヶ月間は②を中心に練習、夏休みまでの残りの期間は③を練習といった具合でした。
夏休み以後は音読を課題にはしませんでしたが、理解が不足しているな(読み飛ばしているな)と感じられる文は、授業中に部分的に音読していただきました。

*6:Rくんのお母さまにお願いして、そのまま掲載させていただきました。
どのお子さんに対しても、主語の抜けや誤字脱字などのいわゆる「ミス」をなくすよう指導します。もちろん、Rくんにも答案の添削や授業中での指摘はしましたが、ミスに関する指導よりも、「自分の頭を働かせること(=自分で納得できるまで考えること)」を優先して厳しく求めました。Rくんが「きびしいですが」と書かれているのはこの点であって、ミスをなくす指導についてではありません。
ミスはもちろんしないに越したことはありません。しかし、ペーパーテスト以外の場面を考えれば、ミスなんて他の方法でカバーできる(たとえば、人にお願いしてダブルチェックをするなど)場面がほとんどです。テストのミスをなくすことに必死になるより、しっかり自分の頭で考える力をつけたほうが、よほど将来の役に立つと思います。子どもの個性をつぶしてまで(本人の意志には関係のない教師や大人の都合で、ミスをなくすことを優先させてまで)、受験・ペーパーテストに適応させる必要はない、というのが私の考えです。
「受験(ミスが許されないペーパーテスト)に適応しなければ」と汲々とする必要は全くなく、子どもの個性を生かしたままでも、本人が望む成績を十分に収めることができるということが伝わる良い例になると考えたため、そのままの掲載をお願いしました。