春秋おじさんのブログ

中学受験の国語をオンラインで教える家庭教師です

<2023年受験体験記>Hさん

Hさんとは6年の6月から一緒にお勉強しました。
塾に通いながら、私の授業も併用していただく、という形でした。

Hさんは、文章自体を読む力はすでに十分お持ちでしたが、

① 設問の読み飛ばし
② 漢字・文法などの知識に抜けが多い
③ 語いの不足

が原因でテストでは、実力に見合った点数が取れていませんでした。

 

勉強の経過

6年7月合不合判定テスト

 

①~③の弱点は具体的には次のような形で現れています:
大問二
問一 形式段落の終わりに脱文を戻す問題だったが、設問を読み飛ばし、段落の途中の文に戻してしまった。(弱点①)
問九 適切で「ない」ものを選ぶ、という設問文の見落とし。(弱点①)
問十一 選択肢を二つに絞るところまではできたが、「もっぱら」の意味がわからず、結局、どちらも正しいように思えたので、なんとなくイを選択。(弱点③)
大問三
問一 正答率が高い慣用句の問題で失点(弱点②)
大問四(弱点②・③)
3 シンセツを踏みしめて歩く→親切(正解:新雪
8 この場面では守りを固めるのが定石だ→ていぎ(正解:じょうせき)

テストの直しを一緒にしながら、それぞれの弱点については、次のように方針を立てました。

弱点①
Hさんの性格*1を考えると、設問の読み取りミスはゼロにはならないかもしれないが、かなり減らせるのではないかと思いました。
設問に印をつけながら解くなど、自分で工夫をしながら問題を解くようお願いしました。

弱点②・③
「言葉の意味」を大切にしてほしい、ということを口酸っぱくしてお伝えしました。
とくに漢字の書き取りの問題は、一字ずつの意味と音を考えながら覚えたり、毎週の小テストで解答することを心がけてほしい、とお願いしました。
また、語いや慣用句については、モノグサ(アプリ)で反復練習していただきました。

Hさんはいずれのお願い(提案)も素直に受け入れてくださったので、あとは結果が出るまで忍耐強く継続できるか*2、だけが問題でした。

7月過去問演習

少し早めの動き出しではあったのですが、夏休みに入ってすぐの時期にHさんは過去問を解かれました。
どのお子さんもそうなのですが、初めは点数が思うように取れません。ですが、毎回、きちんと直しや自分の間違いを分析することを積み重ねれば、必ずできるようになります。
そのために、直し・分析のノートを作っていただくようお願いしました。

Hさんにお見せした直しノートの見本
実際にHさんが作られたノート

この過去問の授業を終えたときに、お父さま・お母さまが「本当に解けるようになるんのでしょうか?」と不安そうに質問されたので、私が「早ければ11月、おそらく12月半ばくらいには、合格点を十分に超えると思います」とお答えしたのを今でも覚えています。*3

11月過去問演習

合格者平均にはまだ少し届かないのですが、受験者平均は超えています。

このとき、お父さまから「娘が字数指定の記述で何回も消しては書き、という作業をしているのが気になるのですが」とご相談いただいたため*4、実際に私が頭の中で考えていることを口頭で説明しながら解いているところ*5を、見ていただきました。
適切なタイミングで、こうしたご相談をお父さまからいただけたのは、とてもありがたかったです。

12月志望校判定テスト

正答率が高い選択肢問題は間違わない、記述も必ず△はとる、といった、高得点を取るための基本がほぼ出来上がっています。
課題だった漢字・知識も正答率が高いものはすべて得点できるようになりました。

本番直前の過去問演習

Hさんがしっかり練習を積んでくださったことで、かなり高得点が取れるようになりました。
算数も安定した成績が取れていたため、1月校も含め、入試本番は私もかなり安心して見守ることができました。

Hさんがまじめにコツコツ勉強を続けてきた結果です。
お父さま・お母さまのサポートもとても大きかったです。Hさんの答案をこまめにアップロードしていただけたことで、私もスムーズに指導することができました。改めてお礼申し上げます。

お父さまの振り返り

長い中学受験生活が終わり、4月から第一志望校に通えることが決まりました。
先生のご指導のおかげで最終的に国語は得点源となり、入試本番でも良い結果を残すことが出来ました。大変ありがとうございました。

先生からのご指導、アドバイスで最も印象に残ったことの一つは「ねばり」です。
娘は国語も含めすべての科目において、分からない問題に当たった際に安易に諦めてしまう傾向がありました。例えば理科で典型問題ではない初見の問題(ただし常識や既習知識である程度は解けるはず)に全く手が出ない状態で、経験を積めば対応できるようになるのか、もしくはセンスの問題なのかと先生に相談したことがあります。
先生は普段の授業から娘の性格もよく見抜いていらしたようで、「分からない」と思ってからのねばりが弱いことをご指摘されました。国語であれば、漢字や知識問題で、知らない・忘れた問題が出たときに、たとえば漢字一字の意味から推測して思い出すなど、ねばって正解になりそうな理屈を考える、という作業が必要だとおっしゃり、普段の授業から知識と関連付けて答えさせることを徹底してトレーニングしてくださりました(娘は辛そうでしたが笑)。

私が考えるに、先生にご指導いただいた「関連付けて知識を広げていき、ねばって答えを導き出す」ことこそ、生涯学習を続けていく中で最も重要なスキルの一つではないでしょうか。一生使える勉強の本質を教えて頂き感謝しかありません。

【先生にご指導をお願いしたきっかけ】

娘は新4年生から四谷大塚に通塾しておりました。もともと読書が好きだったこともあり、国語は悪くない成績(Y60前後)で推移していました。ところが、5年後半から文章の難度が上がったからなのかは分かりませんが徐々に成績は下がり*6、6年生の序盤には組分けテストはY55程度、週テスト(Cコース)では50以下の偏差値帯が定位置となりました。
何をやれば国語の成績が上がるのかも分からず困っていました。そんな中、偶然先生のブログを見つけ、授業以外でも国語に触れる時間を意識して作ってくださる先生なのかなと思いコンタクトを取りました。6年生の5月のことでした。

【指導内容】

先生は子どもや家庭の負担を大きく増やさずに効率的な学習を意識されています。「普段の通塾や算数などで大変でしょう。」と新たな教材は用いずに、四谷大塚の週テストや組分けテストの直しが中心で大変助かりました。1対1でディスカッションしながら解き直しをすることで、選択問題の根拠や記述に織り込むべき要素などを確認することができました。このような先生との対話は集団授業ではなかなか難しいことと思います。
それに加えて、モノグサでの語彙のトレーニング、GoodNotesでの漢字の添削など授業以外でもサポートしていただきました。
夏以降は主に過去問のご指導を中心にお願いしました。初めて解いた過去問は20点台しか取れずに家族一同ショックを受けましたが、先生が「入試本番までには必ず取れるようになります。」とおっしゃってくださり励みになりました。6年生も後半になってくると毎週のようにある模試と過去問演習で受験生も家族もいっぱいいっぱいになりますが、授業で取り扱わないものも含めて先生は一つ一つ丁寧に添削してくださりました。
また、この時期の受験生は配点の高い読解・記述に目が行きがちですが、やれば確実に点が伸びる漢字・語彙もしっかりサポートしてくださったことが後々の国語の安定化に繋がったかと思います。

【成績の推移】

国語は学習の効果が短期間では出づらい科目であることは誰もが知る事実かと思います。
先生のご指導を受けてからも、すぐには偏差値という目に見える形での成果は得られませんでした。漢字・語彙も本人のやる気スイッチが入らず、秋になっても苦しい時期が続きました。それでも先生は成績がいい時も悪い時もいつもと変わらないテンションと内容でブレずに授業を継続してくださりました。
冬が近づく頃には、数字には出なくても段々と力がついている実感がありました。時間内に解き切れなかった過去問が徐々に埋まっていき、ボロボロだった漢字・語彙が少しずつ安定し、記述も聞かれていることに対して答えられるようになっていきました。
最終的に12月の合不合判定テストは偏差値が66に、サピックスオープンは57まで上がりました。過去問もほとんどの学校で合格者平均以上を得点できるようになり、国語が苦手科目を埋め合わせすることで総合点でも安定し始めました。また、国語が安定することで直前期には算数や暗記科目に時間を使うことが出来ました。
その勢いのままに、1月の前受け受験はチャレンジ校も含め全て合格できました。2月1日の第一志望校でも合格を頂き、受験を終えることができました。

【最後に】

先生には授業はもちろんのこと、授業以外でのサポートや親へのアドバイスなど色々な面で支えて頂きました。志望校選択に悩んでいた際には、たまたま東京にいらした先生が自宅まで来て直接アドバイスしてくださり有難かったです。
娘には先生に教えて頂いたことを忘れずに、充実した楽しい6年間を過ごしてほしいと思います。

先生の魅力がもっと多くの人に伝わり、多くの子どもたちが先生の授業を受けて成長してくれることを願っています。
ありがとうございました。

 

Hさんからのメッセージ

Hさん、合格おめでとうございます。
カッコいい(?)似顔絵までいただいて、恐縮です。

Hさんとの授業を振り返っていて思い出すのは、野菜や魚の旬の話をしたとき、どちらも嫌いで食べないから知らない、と言っていたことです。
国語の先生としては、「知識として知っておこうね」と言いたいところで、確か授業でもそう言ってしまったと記憶しているのですが、本音としては、「その好き嫌い、いいなあ」と思っていました。
今、改めて、ぜひその偏った好き嫌いを大事にしてほしいと思います。

というのも、過去問にあった自由作文をいくつか見ていると、なんとなく「大人」に期待された「いい子」の答えを書いているようにも思えたからです。
Hさんは周りがよく見えていて、自分の意見を調整するバランス感覚も持っていらっしゃると思うのですが、「大人」を困らせるような「偏っていて何が悪いんだ」くらいのふてぶてしさも場面によっては出せると、鬼に金棒ではないでしょうか(こんなことを書くのは、なんとも大きなお世話ではありますが)。

Hさんの「偏り」が光り輝く個性として、誰かを救うときが必ず来ると思います。
ご自身の個性も大切にしながら、楽しい中学・高校生活を送ってください。

*1:マイペースではあるが、一つひとつの課題は質が高い状態でこなしているという性格。Hさんはモノグサも毎日こなしていらっしゃったし、お渡しした漢字のテストも漏らさずこなしていらっしゃいました。

*2:一般的に、設問の読み飛ばしグセをなくしたり、漢字・語いの成績が見える形で得点率がアップしたりするまでには、3~6ヶ月かかります。

*3:果たしてその通りになるのですが、こうした予測ができたのは、
①7月の時点で、制限時間をオーバーしているとはいえ、解答らんがきちんと埋められており、しかもほぼすべての記述問題で△の答案を書けていること
②ここまでの勉強で指示に対する漏れが少なかったことから、直しノートを作りながら授業内容をしっかり反復していただけるだろう予想できたこと
が条件として揃っていたためです。

*4:授業時間をなるべく短くするため、通常、授業中に生徒が問題を解く時間をとっていません(授業外ですでに解かれた問題についての解説のみを行っています)。ですので、解いているところをご覧になっていて気になることは、積極的にご相談いただければと思います。

*5:本当に解いているところをHさんに見せたかったため、あえて学校解答を見ないでガチンコで解いているところを見せました。とても緊張したので、今も覚えています。学校解答とほぼ同じ答えが書けて安心しました。

*6:おそらくですが、設問条件が4年生よりも複雑になり、設問の意図を読み取らなければマルにならない問題が増えたこと、文章の分野によっては(とくに随筆で)語いが不足していたためではないかと推測されます。